これもまた成長



   これこれの数年後
※現代転生パロ、伏木蔵女体化、生理ネタ







「こんにちわぁ」
 軽やかなノックの後に間延びした独特の挨拶とともに伏木蔵がやって来る。今日は学校帰りにそのままやってきたのだろう制服姿だ。最早、職場の一員と言ってもおかしくないほどに伏木蔵は馴染んでいる。
「いらっしゃい」
「ちょうど良かった、今お茶を煎れたところだったんだ」
「わー、いただきますー」
 山本や高坂に迎えられ、これまたいつもと同じようなやりとりをする伏木蔵だが、その様子がおかしいことに雑渡は気が付いた。おかしいとは言ってもその変化は僅かなもので、そういった変化によく気がつく山本も気が付いてはいないようだ。
(気のせい、ではないよねえ)
 気のせいではないことを確認するためにも雑渡は手招きして伏木蔵を傍へ呼んだ。
「なんですかー?」
 伏木蔵はすぐに雑渡の方へとやってくる。漫画ならばとてとて、と擬音がつきそうな幼さを残した歩き方は出会った頃のままで、なんだか感慨深くなった雑渡は傍に来た伏木蔵をひょいと自分の膝の上に乗せた。
 まだまだ軽い。けれど、出会ったときからすると随分と背も伸びたし、それに重くなっている。伏木蔵の成長をしみじみと感じた。
「わあ、だっこなんて久しぶりですね!」
 嬉しい!と惜しげもなく笑みを零す伏木蔵に、雑渡の目尻も自然と下がる。そんな上司のデレきった姿に毎度のこととはいえ、部下達は溜息を禁じ得ない。
 このロリコン上司と言わんばかりの部下達の視線などものともせず、雑渡は膝に乗せた伏木蔵の前髪をかきあげ、じっと見つめた。
「……、伏木蔵、体調悪いんでしょ」
「「「え?」」」
 雑渡の問いに驚いたのは部下達だった。彼らも伏木蔵とは長い付き合いだが、元々悪い顔色だということを差し引いても特別体調が悪いようには見えない。
「こなもんさんは何でもわかっちゃうんですねぇ?」
「そんなときまで来なくていいのに」
「こないほうが体に悪いんです。それに、会えないとこなもんさんさびしいでしょ?」
「うん、そうだねー。おじさん泣いちゃうかも」
 本当に具合が悪いのか、それを本当に心配しているのかいまいちずれた2人の会話に山本がおほん、とわざとらしく咳払いをして割って入った。
「…で、体調は大丈夫なのかい?」
「おなかが痛いだけですから、大丈夫ですよー」
「おや、おなかが痛いのかい? おじさんが温めてあげよう」
「こなもんさんくすぐったい!」
 伏木蔵の薄い腹部をくすぐるように撫でる雑渡の姿に諸泉が「セクハラですよ!」と突っ込むが、雑渡にはそんなものどこ吹く風だ。
「…山本さん、温かいタオルでも用意致しましょうか」
「ああ、そうだな。高坂頼む」




 そうして用意して貰ったタオルを腹部に当てながら、何気ない話をしたりといつもと同じように過ごす。はたからは平気に見えるようだが、痛みは未だ続いていて、伏木蔵は残念に思いながらも帰宅には早い時間だが今日はそろそろ帰ろうと決めた。
「送っていこうか?」
「大丈夫ですよー」
 具合の悪い伏木増を心配しての提案だが、本人にあっさりと断られてしまった。
 甘え上手でもありながら、しっかりと線引きした態度をとれる聡明さも気に入っているところだが、具合の悪いときぐらい甘えてくれていいのに、と雑渡は思った。しかし伏木蔵が一度決めたことは譲らない頑固な一面もあることも熟知している雑渡はそれ以上無駄になるとわかって説得などはしない。
 ふと視界に入った伏木蔵の細い足に赤いものが伝っていることに気が付いた。
「伏木蔵、それ」
 雑渡が思わず指を指しながら指摘すると、伏木蔵を初めとしてその場にいたみんなの視線がその先、伏木蔵の足に注がれる。
「血!?」
「もしかしなくても生、」

「セクハラですってば!」  大人達の動揺などどこ吹く風で伏木蔵は納得したように頷いていた。
「どおりでお腹が痛かったんですねぇ、納得です」
「普通気が付くだろ!」
「えー、だってこれが初潮ですよ? 話には聞いてましたけど、なってみなくちゃわかんないじゃないですかー」
「え?初めてなの?」
「そうですよー。女の人って毎月こういう風に痛みがくるわけなんですね、すっごいスリル〜」
 恥ずかしがるわけでもなく、いっそ楽しそうにお決まりの台詞を言う伏木蔵に部下達はがっくりと肩を落とした。さすがあの雑渡に懐いている子供、一筋縄でいくわけがない。
 一人考えて込むように顎に指を添えて黙り込んでいた雑渡はふむ、としみじみと頷き、そして呟いた。
「伏木蔵も女の子から女になってしまったんだねぇ」
「だからセクハラです!!」
 言ってどうなるわけではないと分かってるのに、諸泉はツッコミせずにはいられなかった。




貴方に少しは近付きました?
「尊奈門、ナプキン買ってきてよ」「なんで俺なんですか!?」





にょたでは外せないお約束、女の子の日ネタです。苦手な方すみません; 伏ちゃんは遅めだろうなぁ、とか考えたら止まらなくなりました(苦笑)
こないだからこっそりやっているアンケートで独走トップな雑伏に吃驚してます。嬉しいんですけどね! うちのマイナー設定な雑伏でもよろしければどうぞ…!




2011/06/19