だいすきだよ



   これの後編
※現代パロ、数馬・三之助・左門女体化







 委員会の途中なのかジャージ姿の三之助は顔を上げた数馬が泣きはらしているのを見て、目を丸くした。
「泣いてるし、しかもびしょびしょだし」
 肩から下げていたスポーツバックからタオルを取り出した三之助はそれを数馬の頭にかける。
「とりあえず拭きな。あとこれ着ろ」
 そう言って自分が着ていたジャージを脱ぎ数馬に渡した。
「で、でも」
「こんな数馬見といてほっとけるわけないっしょ。それに風邪でもひかせたら作にめっちゃ怒られる」
「そんなこと、ないよ」
「そんなことあるんだって。…って、今日デートじゃなかったっけ?」
 デートがおじゃんになった原因の張本人でもある三之助にそう言われて、数馬は苦笑するしかない。三之助も左門も本当に悪気はないから、憎めないのだ。
「うん、そうだったんだけど…」
 力なく笑いながら事情を説明すれば、三之助は相変わらず「左門はともかく、自分は迷子になんかなってない」と無自覚だ。
「作のやつ、数馬おいて行ったわけ」
 いつも飄々としている三之助の眉間に皺が出来る。これは相当機嫌がよろしくないようだ。
「うん、でも、ほら、仕方ないから」
「仕方なくなんかない」
 抑揚のない声でそう言い切った三之助は数馬の手を掴んで歩き出す。
「え!? 三之助、どこ行くの?!」
 数馬の問いには答えず三之助はぐいぐいと数馬の手を引いてどんどん進んでしまう。同じ女子同士ではあるが、体育会系で毎日走り込んでいる三之助の力に叶うはずもなく、数馬は引きずられるように歩くしかなかった。




 一方幼なじみを捜して飛び出した作兵衛は走り回って、ようやく校舎裏の今は使われていない古い焼却炉の前で左門を発見したところだった。
「バカヤロー!トイレに行くって行ってこんなところまでうろついてんじゃねえよ!」
「なんだ!さくもトイレか!」
「こんなとこにトイレがあるか!」
 相変わらず迷子になっていたとは微塵も感じさせない態度。作兵衛はがっくりと肩を落とした。
 あともう一人無自覚三之助を捕獲しなければならないと思うと、気が遠くなる。
「…ん、おいさく!」
「なんだよ」
「今日、数馬とデートじゃないのか」
「おまえが言うか!おまえ達がいなくなるから探し回る羽目になったんだろうが!」
 誰のせいだと思ってやがる!思わずそう怒鳴ってしまう作兵衛。ふつうの女子ならビビってしまうところだが、元々の物怖じしない性格と幼なじみとして付き合ってきた賜物で左門は動じることなく、作兵衛を見返し、そして言う。
「作兵衛は大馬鹿者だな」
「なっ…!」
「呆れてものが言えんぞ。これじゃ数馬に捨てられても仕方がない」
 これ見よがしにため息を吐いて見せた左門は作兵衛の腕を掴んでぐんぐんと歩き始めた。
「バカ、どこ行くんだよ!?」
「馬鹿はどっちだ。甲斐性なしの幼なじみのために私が一肌脱いでやる」
「ハァ?!」
 結局幼なじみに逆らいきれず、作兵衛は渋々左門の後を歩いたのだった。




 左門に引っ張られる作兵衛と、三之助に引きずられる数馬は、校門前でばったり鉢合わせした。
「お、左門。そっちもか」
「おう!私達なかなかいいタイミングだな!」
 そう言って左門と三之助はそれぞれ作兵衛と数馬の背中を押す。押された2人は校門前で向かい合う。
「あ、」
 数馬の目元が赤く腫れていることに気が付く作兵衛。数馬はなんて言ったらいいかわからず俯いた。
「いいか、さく!彼女を放っておくなんて、彼氏失格だぞ!」
「数馬が我慢する性格なのはわかってんだろ。考えろ、バカ作」
「おまえら好き勝手言いやがって…」
「この件に関しては私達数馬の味方だからな!」
「ちゃんと話し合えよ。数馬のことこれ以上泣かせたら怒るかんな」
 言いたいことを言ってすっきりした2人はぽんぽんと数馬の肩を優しく叩いて、じゃあな!とその場を後にする。
 残された2人はどことなく気まずくて黙ってしまう。


「…泣かせたの、俺、だよな」
 ごめん、作兵衛がそう言って頭を下げた。
「ち、ちが…!これは私が変にいろいろ考えちゃっただけで!」
「数馬」
「は、はい」
 ぐっと顔を上げた作兵衛はまっすぐに数馬を見つめ、それとほとんど同時に作兵衛の右手が数馬の左手を掴んだ。
「俺はあいつらに言われちまうようなバカだし、つい癖であいつら捜しに行ったりしちまうけど、彼氏失格かもしれねえけど、おまえと別れるのは嫌だ!俺は、数馬が好きだ!」
「作兵衛…」
 いつもの妄想で別れ話でもしたのか、作兵衛は数馬がびっくりするぐらい必死に言い募った。そんな作兵衛の様子に思わず、笑ってしまった。
「私も別れたくないよ」
「数馬…」
「私もね、作兵衛のこと、だいすきだから」
 そう伝えれば作兵衛の顔はみるまに耳まで真っ赤になる。つられて自分の頬も赤くなるのを感じながら、数馬はにっこりと笑った。
「これからも、よろしくお願いします」
「…おう、」




僕らの恋愛事情 後
(そういやあいつらどこ行ったんだ)
(探しに行こうか。一緒に、ね)





相方と友人Aにこのネタを熱く語ったら、相方には「もう書けし」と言われ、友人Aには「よく考え付くね」と言われました。扱いが酷いと思います。

もっと3年みんなでわいわいさせたかった。孫出せなかった。
俺得裏設定で孫は竹谷と、三之助は体育委員の誰かと、藤内と左門がカップルになってたり、なったり。




2010/10/11