すきだから、不安になるの



※現代パロ、数馬・三之助・左門女体化







(これは、叶わない恋だったんだ)

 一瞬でも夢も見れたことが奇跡で、そして不運なのだろうと、数馬は零れそうになる涙を唇をぎゅっと噛みしめて、耐える。
 そうして涙を堪えながら足早に歩いていると、突然冷たい水が数馬を襲った。
「うわぁ…!」
「お? ああ! すまない、人がいるとは気が付かなかった!」
 花壇の向こうから申し訳なさそうに謝ってきた水やり中だった用務員のおじさんに蚊の鳴くような声で「大丈夫です」と答えて、数馬はふらふらとその場を離れる。
(あはは、冬じゃなくてよかった。………なんかもう、ダメかも)
 数馬の目から、ぽろっと涙が零れた。




 数馬は長いこと片思いをしていた。
 お相手は中学で知り合って仲良くなった同じ学年の作兵衛。ちょっと目つきは悪いし、口も悪いけど、なんだかんだと言いながら面倒見がよく、責任感もあって、とても優しい人だと、付き合っていくうちに知っていき、いつの間にか好きになっていた。
 でも作兵衛にはいつも一緒にいる幼なじみの左門と三之助がいて、迷子癖のある彼女達中心に作兵衛の世界は回っていた。
『やっぱり左門か三之助と付き合ってるのかな…ねえ、藤内どう思う』
『いっつも俺に相談してるけど、それじゃ何の問題の解決にならないってわかってるでしょ』
『う、でも藤内以外に言える人なんていないだもん』
『はぁ…こないだ2人に聞いたよ。作兵衛と付き合ってるのかって、2人とも「何で?」だって。あの2人にとって作兵衛は男とカテゴライズされてないっぽいね』
『藤内…!』
『でも僕が出来るのはここまで。それでどうするのかは数馬が決めるしかないんだからね。まあ当たって砕けても骨は拾ってあげるよ』
 小学校以来の付き合いになる藤内に背中を押されるようなかたちで、数馬は告白すること決意した。


 そして今年の春。中学3年生になった数馬は作兵衛に告白し、そしてなんと作兵衛と付き合うことになったのだった。


 特別大きく変わったわけではない。昼ご飯は相変わらずいつもの6人だし委員会やら何やらで何かと多忙であまり一緒に入れる時間は多くない。
 それでも、数馬は幸せだった。


 だったのだが…―――




 今日は放課後久しぶりに2人でデートの約束があり、数馬は今日を楽しみにしていた。遠足前の子供みたいに前日はなかなか寝付けなくて、寝不足気味なのに眠気なんか全く感じないくらい浮き足立っていた。
「ごめん、待たせたか?」
「ううん、うちも今ホームルーム終わったところだよ」
「そっか。…あ、その、じゃあ、行くか」
「うん!」
 他愛のない話をしながら昇降口まで行き、上履きから靴をはきかえようとしたとき、作兵衛の携帯電話が鳴り出した。嫌な予感がした。
「もしもし、……ハァ!? なんでみとかねえんだよ! わかった、行けばいいんだろ!」
 終話した携帯をポケットに捻り込んだ作兵衛はくるりと数馬の方を向くと両手を合わせて「ごめん!」と謝った。
「またあいつら迷子になったらしくて、捜さなくちゃなんねえんだ!」
 もう一度「ごめんな!」と謝って作兵衛は足早に左門と三之助を探しに行ってしまった。
 数馬の嫌な予感は的中してしまったのだ。
 実はこの展開、初めてではない。
 デートでもなんでも2人が迷子になると作兵衛は行ってしまう。作兵衛の世界は変わらず幼なじみ達が中心なのだ。
 幼なじみが大切な気持ちは分かる。それに数馬にとっても左門と三之助は大切な友達だ。
 そう思っていても、わかっていても、駄目なのだ。


(お別れした方が、いいもかも)


 数馬は一人とぼとぼと歩きだした。
 最初から叶わない恋だったんだと、そう自分を納得させようとしてもうまく出来なくて、泣きそうなところを持ち前の不運で水をかけられてしまって、全身びょしょぬれになって、とうとう数馬は泣いてしまった。
「…う、っ」
 一粒涙が零れると、後はもう止まらなくて、数馬は俯いてぼろぼろと泣いた。



「あれ? 数馬?」
 聞き慣れた声が不思議そうに数馬を呼んだ。思わず数馬は顔を上げた。
「…さ、んの、すけ…」
 目の前には作兵衛が捜しに行った幼なじみの片割れである三之助がいた。




僕らの恋愛事情 前
(恋愛ってむずかしい)





  




設定補足。3年生6人は仲良し。数馬、三之助、左門がおにゃのこ
作兵衛と三之助と左門は幼馴染。家近所。
藤内と数馬は小学校からの一緒。孫は中学から一緒になった。




2010/10/11