Eternal trinity 21 「そんなにルルーシュさまに似ているんですか?」 「本人としか思えないくらいに似てるよ」 日本政庁、神楽耶の執務室では書類を処理しながらそんな会話が繰り返されていた。 「ホクトが懐いちゃってさ、今日も遊びに行くって言ってた」 スミレと出会ってからもうすぐ1ヶ月になろうとしている。ホクトは放課後など時間のある時にちょくちょく孤児院に顔を出すようになり、何度も顔を出しているうちの孤児院の子供と仲良くなり、現在ではほぼ毎日遊びに行っている状態だ。 「僕が家に帰ってもいないときが最近増えて…寂しいなぁ」 「男の嫉妬は見苦しいですわよ」 処理が終わった書類を整えながら神楽耶はスザクの呟きを一蹴した。 「でも、意外です」 「何が?」 「ホクトは母親の代わりを求めるような子ではないように思います」 それは神楽耶がホクトを育ててきて感じたことだった。いくら似ているからといってそれだけで懐くなんてことがあるだろうか。 「それはわからなくもないけど、本当に似てるんだ」 姿形だけでなく、本質のようなものが。微笑む表情が、ちょっとした仕種が。滲み出るルルーシュを構成していた深い愛情のようなものが、本当に良く似ている。 「本当にルルーシュじゃないのかと、何度も考えてしまう」 そうではないかと期待しては、それはありえないと否定し絶望する日々が続いていた。 「…あの銃創も気になるし」 「銃創?」 「そう。肩と胸に。胸の銃創がコーネリア総統が撃ったところと同じだと思うんだよね」 「ちょっと待ってください!」 がたっと大きな物音を立てながら、神楽耶は勢いよく立ち上がった。 「な、何?」 「肩の銃創ってどちらですか?」 「え、右肩だったよ。鎖骨の少し下あたり」 「そんな…!」 神楽耶はそう呟いたきり黙りこんでしまう。まったく事情が飲み込めないスザクは一体どうしたことかと眉を顰めた。 「…一緒ですわ」 「え?」 「ルルーシュさまはゼロとして一度右肩に負傷したことがあるの!」 「なんだって…!」 神楽耶によって齎された情報により、傷跡がすべて一致した。そっくりの容姿ならまだ他人の空似ということもあるだろう、しかし傷跡まで一緒なんてあるわけがない。 スミレがルルーシュである可能性がまた1つ増えた。けれど大きな問題がまだ残っている。 「死んだ人間が生き返るわけがない、よな」 そう何度可能性が浮上しても問題はそこなのだ。死んだ人間が生き返ることない。自然の摂理を覆せる存在などいない。 「……ありえるかも、しれません」 「神楽耶?」 「ルルーシュさまは灰色の魔女と契約し、人ならざる力を持っておられました。私も詳しいことは教えて頂けませんでしたが、在りえないことが起こっても不思議ではないかもしれません」 灰色の魔女――ゼロと共にいた何処か神秘的な雰囲気を持つ少女の姿が浮かぶ。確かにあの少女は不思議な現象を引き起こしスザクに過去の出来事を見せたりしていたし、ゼロも同様に不思議な力を持っていた。スザク自身が助けられたあのゼロ最初の事件がいい例だ。 「じゃあ、本当に、ルルーシュ」 「あくまでも可能性ですわ」 可能性でも、夢のような話でも、スザクはそれを信じたかった。失った大事な人ともう一度巡り会えるなら、例え自分のことを覚えていなくてもそれを望む。――そして今度こそ守りたい。 ――ビーッ ビーッ スザクの思考を引き戻すように通信を知らせるアラームが音を立てた。通信の相手は藤堂だった。 『皇総代! 緊急事態だ、モニターを付けてくれ』 「ええ、一体どうしましたの?」 神楽耶の代わりにスザクがモニターの電源を入れる。すると、とある銀行とそれを警察とたくさんの野次馬が囲っている映像が流れる。 『過激派の立てこもり事件が発生した』 「要求は?」 『いつもと同じだ。』 過去のようにブリタニアはあるべきだと未だに主張し続ける過激派をいつまでものさばらしておくわけにはいかない。説得し応じないようならば、速やかに制圧しなければならない。 「では、コーネリア総統に連絡を。それが済んだら藤堂も現場に…」 その時、カメラがズームされ、銀行内部の様子が映し出される。死角があるのではっきりとは確認できないが犯行グループは10人前後と考えてよさそうだった。カメラが動き、一角にまとめられている人質達の姿が映し出された。 「―――ッ!!」 「スザクどうしました?」 「……ホクト、が…」 モニターに映る寄り添う子供と女性。画像が荒く確認し難いが、間違えない。 「あの中にホクトがいる! それに、スミレさんも!」 「なんですって!? 藤堂、すぐに四聖剣を引き連れて現場に急行なさい!」 『了解した』 「待ってください! 僕も行きます!」 『スザク君…』 この10年近くスザクは代表として政治の方に尽力をつくしており、このような荒事に顔を出したことはなかった。大切な人すら守れない力など要らないと、剣を封じたのはもう遠い過去の話だ。それを今、解こうとしている。 『いいのかい?』 「今度こそ守る…。そのためなら、僕は迷いも後悔もしません」 『いいだろう。すぐ降りてきなさい』 「はい!」 スザクはそのまま執務室を後にしようとすると、神楽耶がそれを引き止めた。 「絶対に助けてください…!」 「助けるよ、絶対に」 next 2007/11/05 2008/11/14(改訂) |