2人が生きる世界は残酷で、不確かな2人が愛を告げることは不可能だった。
Eternal trinity 01



 7年前、私とスザクは出逢った。
 第一印象は最悪。でも、日々を重ねるごとに惹かれていった。たぶん、それは私だけではなく、お互いに。
 スザクとナナリーと私と、3人でいつまでもこのまま…―――そんな幻想、長く続くはずがないと私は知っていたのに、愚かにも願ってしまった。
 願いも空しく、あっけなく穏やかな日々は終わりを告げた。母を見殺しにし、私たち姉妹を捨てた祖国ブリタニアの宣戦布告によって。
 ブリタニアが憎かった。許せなかった。私から何もかもを奪うブリタニアを憎まずにいられるか、また許せるはずもない。
 そうして、私に残されたのはナナリーだけだった。しかし幼い私にナナリーを守り抜く力などないことは痛いほどに分かっていた。だから、自らの無力を呪いながらもアッシュフォードの手を取ることを決意した。
 私達はアッシュフォードへ、スザクは京都に身を寄せることとなった。離れたくないと心が悲鳴を上げたけれど、私達はそれぞれの立場があり、それぞれの道を選ばざるを得なかった。

「また会おう、スザク」

 そう言って別れたが、心の何処かでは、もう会うことはないのだと知っていた。だから私は、まだ名前も付いていない幼い想いに終わりを告げた。




 さよなら、私の  ……―――。




 ルルーシュが目を覚ますとぼんやりと見慣れた自室の天井が映る。傍らに感じる温かな温度に首を動かせばそこには幼い顔で眠る幼馴染の姿。
 スザク、吐息のようにルルーシュはそう呟いた。茶色のふわふわとした柔らかい髪、日に焼けた肌、しなやかに鍛えられた身体、今は閉ざされていて見られないがルルーシュの好きな常盤色の瞳。もう、出逢うことなどないと思っていた大切な幼馴染。
 だからあんな懐かしい夢を見たのか、とルルーシュはぼんやりと思う。気だるい身体を起こせば肩に掛かっていたシーツがするりと落ち、剥き出しになった素肌が明け方の冷たい冷気に晒され、ルルーシュはふるり、と身体を震わせた。
 寒さに鳥肌をたてる腕でルルーシュは自らをきつく抱きしめる。
 奇跡的に再会し、惹かれ合うように身体を重ねた。スザクに抱かれている時、スザクを抱きしめている時、スザクと共にいる時、その一時一時がルルーシュにとって幸福だった。しかし、不安でもあった。
(スザクはどこか危うい…私がゼロとして助けなければ、スザクはもう死んでいた。スザクは異常なほど潔く死を受け入れる)
 いつ失ってしまうのかわからない恐怖。過去に失ってしまったことがあるからこそ、ルルーシュは不安に駆られる。
「すきだよ、すざく」
 スザクの前では絶対に言わない言葉をルルーシュは甘く囁いた。そうして柔らかな髪に触れようと手を伸ばせば薄っすらと開いた常盤の瞳がルルーシュを捉える。
「るるーしゅ…?」
 常盤の瞳は優しく微笑み、スザクはその鍛えられた腕でルルーシュを抱き寄せた。ルルーシュの冷えた肌がスザクの温かな肌に包まれる。冷えた体が温まっていくその感覚にルルーシュは何故か酷く泣きたい気持ちに駆り立てられ、泣かないようにそっと唇を噛む。
 ――すきだ、あいしてる
 そうルルーシュがスザクに告げればスザクも同じように返すだろう。けれど、ルルーシュは喪失を恐れて告げることが出来ない。愛し、愛されるその幸福を知ってしまえばルルーシュはもう独りでは生きていけない。
 それにルルーシュはゼロとして、これからブリタニアと戦わねばならない。ナナリーとスザクと当たり前に暮らせる優しい世界を手に入れる為に、その戦いから逃げ出すことは出来ない。

(ごめん、スザク、おまえに好きだと言えないんだ……)




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2007/10/08
2008/11/12(改訂)