人と人とを繋ぐ絆



Burn My World 18




「スザクさん、そわそわしてますね」
「え、そうかな?」
「はい。そんなにお兄様が待ち遠しいですか?」
「ぅえ!? いや、あのっ…」
 あからさまにうろたえるスザクにナナリーは堪えきれない笑みを零した。
 体調が回復したナナリーにお茶に誘われた麗らかな午後。本来ならこの場にいるのはスザクではなくルルーシュなのだが、今は会議に参加している。ルルーシュが会議に参加している間のナナリーの相手としてスザクが指名され、スザクはこうしてナナリーとお茶をしていたのだった。
 メイドの咲世子が用意してくれた紅茶の香りがふわりと漂う。ナナリーは紅茶を一口飲んでふぅと息を吐く。
「心配なさらずとも、お兄様はいらっしゃいますよ」
「それは…わかっています」
 ルルーシュがナナリーとの約束を守らないはずなんてない。だから、スザクはルルーシュがここへ来ることを疑っていない。ただ、ルルーシュが今、自分の目の届く場所にいないことが酷く落ち着かない。ルルーシュへの思いを自覚し途端にこんな調子では自分はこれからどうなってしまうのだろうとスザクは苦笑した。
「スザクさん」
「はい」
「お兄様のこと、お好きですか?」
「え…! その、えっと…」
「お嫌いなのですか…?」
「そんなことありません! 僕は殿下のことが好きで…っあ!」
 売り言葉に買い言葉のような勢いで思わず言ってしまった。スザクはしどろもどろに変な意味ではなく、と付け足すが、何だか余計に白々しい気がしてスザクは口を閉ざす。
「スザクさん気になさらなくていいんですよ、私スザクさんがお兄様のことを好きだと言って下さって安心しました」
 ナナリーはスザクの手を取ってゆっくりと言い聞かすように囁いた。
「スザクさんはお兄様の騎士になる方ですもの」
「え」
「遠くない未来、スザクさんはお兄様の騎士に」
 まっすぐにナナリーの瞳がスザクを見つめていた。その瞳からナナリーが嘘や冗談を言っているのではないことがわかる。しかし、どうしてナナリーは自分がルルーシュの騎士になると断言できるのだろうか。スザクはそのことが疑問だった。
「ですから、お兄様を守って下さいね。…私はお兄様の傍にはいられないから」
 重ねるようにそう言ったナナリーの面影に陰りが映る。スザクはナナリーのそんな表情を見ていたくなくて思わず握られていた手を握り返した。疑問など後でよかった。
「守るよ。絶対にルルーシュは僕が守る」
「ありがとうございます、スザクさん」
 嬉しそうにナナリーが微笑んだ。スザクはほっとすると同時に懐かしい気持ちになった。確か前にもルルーシュとナナリーの仲睦まじい様子を見たときに懐かしいと感じていた。この懐かしさはどこから来るんだろうか。


『王を守って下さって、ありがとう』
『礼などと…王を御守りするのは私の使命ですから』
『それでも私は貴方に感謝します。そして、貴方も無事でよかった』


 脳裏を駆け抜けたヴィジョン。過去の騎士の記憶。ナナリーの微笑みと良く似た微笑みを浮かべる女性。騎士はその人物を良く知っていた。
「王妃さ、ま…?」
「…いえ、私はナナリー・ヴィ・ブリタニア。お兄様を愛するただの妹です」
 呆然と呟いたスザクの言葉をナナリーは笑顔で否定した。スザクは腑に落ちないような表情を浮かべたが、すぐにその表情を改める。
「そうだね、ナナリーはナナリーだ」
「はい」
 秘密を共有したような子供のような笑みで2人は笑う。そうして2人はいつものように他愛のない話をしながら、ルルーシュの到着を待つのだった。こんな温かな日々に終わりが来ることをスザクは考えもしなかった。







 どうして、うまくいかないのだろう。
 昔から望むものは1つだけだというのに。それだけが手に入らない。
 どうすれば、どうすれば手に入る――?








その 想い は  狂気  を 生む





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2008/01/29
2008/11/17(改訂)