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Burn My World 13




『殿下、目標は逃走を開始しました!』
「方角は?」
『殿下の推測通りです』
 ディートハルトのその言葉にルルーシュは口角を上げて、にやりと笑う。残夜の後ろに控えていた純白のKMF――ランスロットのデヴァイサーであるスザクに向かって通信を切り替えた。
「枢木! 予定通りだ、回り込むぞ」
『イエス・ユアハイネス!』
 残夜とランスロットは待機していた通路から、今作戦の目標を捕縛するために大通りへと飛び出したのだった。



 あの怪我からルルーシュが回復して、テロリスト捕縛が進められてはいるが、まだエリア11でテロ活動は続いている。
 消耗戦に持ち込めば物資が豊富であるブリタニア軍が有利であるが、テロリスト達の活動が収まることはなかった。クロヴィス統治時代からテロリスト達の裏で手を引く存在に気が付いていたルルーシュは、何度もテロ鎮圧を繰り返しながら情報を集めていた。
 そんなとき破壊された敵KMFの中から中華連邦で製造されている物が数機混じっていることが判明し、このテロ活動への中華連邦の支援が濃厚になった。それからの調査により、ブリタニアによる日本制圧時に日本から中華連邦へと亡命した当時の内閣高官の存在が明らかになった。名を澤崎敦、どうやら秘密裏にエリア11に戻ってきたようだ。
 黒の騎士団諜報部の者が澤崎に接触を図った結果、澤崎は中華連邦と取引し、その物資・軍事力提供による見返りとして実施的な支配権を中華連邦へ差し出す。そして自らは新・日本の代表として甘い汁を吸うというものだ。
 実質的な支配がブリタニアから中華連邦に変わるだけの名ばかりの日本、そうとは知らずに澤崎に使われるテロリスト。この連鎖を断ち切るためにルルーシュは澤崎の捕縛及び、中華連邦勢力のエリア11撤退作戦を開始したのだった。
 負傷した際から戦場に出るのは自粛していたルルーシュであったが、この作戦は自ら出るときっぱりと宣言した。その宣言に困ったのは幹部連だ。ルルーシュあっての黒の騎士団、ルルーシュ負傷からルルーシュは指揮のみに専念すべきだという声が高まっている。
 しかし、そう言ったところで大人しくしてくれるルルーシュではない、最悪、勝手に出撃されてしまうことだって充分に考えられた。そこで幹部連が出した苦肉の策が、ルルーシュに追随する専用の者を付けることだった。
 ルルーシュの残夜の機体能力についていける機体は限られており、その中から様々な条件が重なりスザクは今作戦におけるルルーシュ付きとなった。


『目標を捕捉!』
 V-TOLに向かって1台の車が向かっている。あれに澤崎が乗っているのだろう。
「危うくなったらまた逃げるか、小物だな」
 ルルーシュはハドロン砲でV-TOLを打ち抜き、その爆風を飛び越えるようにランスロットが回り込む。前方にランスロット、後方に残夜と逃げ場を失った澤崎は車を止めるしかない。ルルーシュは勝利者の余裕を感じさせる声色で厳かに言葉を発した。
「中華連邦への手引きを見逃す気はない。澤崎敦、大人しく投降しろ」
 澤崎の逃走劇はこうしてあっけなく幕を閉じたのだった。
 拘束された澤崎が輸送されるのを見送って、ルルーシュは残夜から降りる。同じようにランスロットから降りていたスザクがルルーシュに駆け寄ってきた。
「お疲れ様です! お怪我はありませんか?」
「…アレしかしていないのにどこで怪我する要素がある」
 やったことといえばハドロン砲を一発撃っただけなのである。どうやったら怪我が出来るんだとルルーシュは呆れたように返す。
「まったく、扇達も大袈裟すぎる」
「そんなことないですよ。殿下、危なっかしいですから」
「は?」
「KMFの操縦は上手いのに、降りたらてんでダメだし、厳しいこと言うけど優しすぎますから、見てる方はひやひやしっぱなしです」
 そんなルルーシュだからこそ皆心配なのだろう。スザクや黒の騎士団の面々、そしてミレイやナナリーも。
「おまえの身体能力が異常なんだ。俺は普通だ」
「カレンに腕相撲で勝てたらその主張を認めてあげます」
「おま…っ、それは…!」
 非力なルルーシュにとって女だてらにエースパイロットをしているカレンに腕力で叶うはずもなく、スザクの出した条件のハードルのあまりの高さにルルーシュは絶句した。
「それが出来ない限りは、皆に守らせてください。そのために黒の騎士団はあるんでしょう?」
「俺を守るためじゃ、ない」
「殿下がそう思ってなくても、僕はそう思ってますから」
 そう言って笑みを浮かべたスザクをルルーシュは何か眩しいものでも見るかのように目を細めた。




 澤崎捕縛により、テロ活動は低下。また澤崎が中華連邦に取引を持ちかけていたことが判明し、澤崎を支持するテロリストは激減した。弱体化したテロ活動はすぐさま鎮圧され、エリア11はほぼ平定されたと言っても差し支えない状態である。ルルーシュの復興支援によりイレヴンの生活水準も改善され、国民感情も収まりを見せ始めた。
 これまでに掛かった期間、ルルーシュが総督に就任してからわずか2ヵ月半の間のことであった。




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2008/01/16
2008/11/17(改訂)