(あつい) 呼吸すら奪われていくような荒々しい口付けを受けながら、ジュードはそうぼんやりと思った。 息苦しさのせいか浮かぶ涙で滲む視界で盗み見るようにそっと彼の人を伺えば、視線に気が付いたガイアスの目元がふっと和らげた。しかし、その瞳の奥にある隠しきれない情欲の炎に、ジュードは奥底の熱をじりじりと煽られているような感覚に思わず身を捩る。 「ガイ、ぁ、んぅッ」 身を焦がす熱をどうすればいいのかわからず、喘ぐように彼の人の名を呼ぼうとしても、それすらも深い口付けに奪われる。 もう自分自身でコントロールすることすら出来ない熱に、ジュードはぎゅっと瞳を閉じて、堪え忍ぶ。その拍子にこぼれた涙をガイアスの大きな手がそっとそれを拭う。その行為すらただただ熱を煽るだけだった。 ジュードが縋るように背に腕を回して身を寄せれば、答えるようにガイアスはまだまだ華奢なその体に回している腕に力を込めた。 最初に口付けを交わす関係になったのはガイアスが所用でイル・ファンを訪れていたときに、たまたま出来た空き時間にジュードの研究室へ訪れたときのことだった。 突如現れたガイアスをジュードは歓迎し、そのままお茶をしながら研究の成果などの話をしていたのだが、ふと会話がと切れたときに視線が絡み合い、目を離せなくなった。 「ジュード」 「ガイアス…?」 立ち上がり、伸ばされた手が頬へ添えられる。触れられている頬が異様なほど熱くなり、鼓動はまるで早鐘のようだ。 同じ性を持つジュードから見ても惚れ惚れする度に男らしく整った端正なガイアスの顔が、ゆっくりと近づいてくる。そこまでくればいくら鈍いと言われるジュードでもこのあと何が起こるのか安易に推察出来た。 しかし、それでも添えられた手を振り払うことも。拒絶することも、逃げることもジュードは出来なかった。いや、しなかった。 ――嫌だと思わなかった。むしろその逆だった。本当はずっと憧れると同時に惹かれていたのだ。 「…ガイアス、」 ジュードはその思いを伝えようとし、しかし言葉が出ず、そのまま言葉を飲み込んだ。そのかわりにガイアスの服の裾をきゅっと握って、そっと瞳を閉じた。 それに答えるようにガイアスから与えられたのは、全て奪っていくような荒々しい口付けだった。 それからお互いに忙しい中たまに仕事で顔を合わせることがあるなら時間を作り、そうして口付けを交わす仲になったのだった。 掲げた信念、誓った使命。口付けを交わすその瞬間だけは忘れて、ただお互いの熱を求めて、熱に酔いしれる。ただそのときだけガイアスとジュードという個になり、お互いだけを感じて、お互いを求めた。 その時、部屋の時計から時刻を知らせる鐘の音が響く。それは刻限を知らせる音だ。ただの個から王である、研究者である自身に戻らねばならない。 「…はッ」 「ん、…ふ、はっ」 出来ることならば、何も考えずお互いの熱によっていたい――そんな思いが隠しきれない熱を帯びたままの瞳。 後ろ髪を引かれる思いで、それでも2人はそれぞれの立つべき場所へ。 「…元気で。無理は禁物だよ」 「無理をしているのはジュード、おまえの方だろう。体を壊して誓いを違えるなど認めんぞ」 「わかってるよ。じゃあ、また」 「ああ」 そうして背を向けて2人は振り返ることなく歩き出す。しかし、互いの気配が感じなくなった頃、少しの間立ち止まり、先程まで触れ合っていた唇にそっと指を這わした。 もう触れ合った熱などそこに残っていないはずなのに、確かにそこに残っているぬくもり。 (嗚呼、) 瞳を閉じ小さく微笑んで、そうしてまた歩き出す。あるべき場所へ、互いに誓った想いのために。 その熱に酔う TOXというかガイジュにどっぷりハマりました!もうね陛下カッコイイ!ジュードたんマジ天使!ガイジュ増えろ!ガイジュもっと熱くなれよおおぉぉぉおおお! クリアしたらガイジュ書く!って意気込んでたんですが、なんか陛下なのかジュードなのか書きにくくて、何度書いても納得出来なくて、今回ようやく形になりました ガイジュは「恋愛<使命・信念」ってイメージがあります。あ、もちろんジュードにベタボレな陛下も好物です。というかガイジュならなんでもおいしいです! …ガイジュ友達が欲しいです、切実に…。 2011/10/25 |