バニーの涙はキレイだな」 「なんですか、突然」 「突然なんかじゃないって、前から思ってたんだ」 俺の言葉にバニーにしては珍しく、はあ、と気の抜けた返事をする。しばらくして何か思いついたのか、バニーはふっと笑った。 「虎徹さんの涙は、愛しくなります」 「ぶっ…!」 飲もうとしていたワインを思い切り吹き出してしまった。爆弾発言をかましてくれたバニーのほうは、しらっとした目で俺を見ている。何だ、俺だけが悪いって言うのかこの状況! 「せっかくの良いワインをもったいない。そのうえ汚い」 「バニーちゃんがいきなり愛しいとか言うからいけないと思います!」 「貴方だっていきなり綺麗とか言ったじゃないですか。おあいこです」 「へー、へー、どうせおじさんが全部わるぅございますよ」 こぼれたワインを拭き終えると、バニーがこちらに向かってボトルを差し出していた。どうやら注いでくれるらしい。ここはご好意に甘えておこう。 「僕が貴方の涙が愛しいと思うのは、貴方はめったに泣かないから」 「へ?」 「虎徹さんは人の懐には土足で入っていくのに、自分の懐は見せないじゃないですか。だから、そんな虎徹さんが涙を見せてくれるってことは、きっと許されたんだって、そう思うと愛しくなるんですよ」 先程よりバニーの頬が赤くなっていた。俺の頬もきっとそうだろう。熱いぐらいだった。ワインのせいだけではないことはわかっていたが、俺はワインのせいすることにした。 「……なんか、酔っちまったな。あっちぃわ」 「そうですね」 バニーは俺の言葉を言及することもなく、微笑んで頷く。俺もバニーもそれから黙ってワインを仰いだ。ただただ、となりにあるぬくもりに意識をゆだねていた。 思い返せば、なんて幸せな時間だったんだろう。 ただの俺とおまえで過ごせた、限られた時間。出来ることなら、ずっと、ずっと、これからもずっと、そう過ごしていきたかった。 (ごめんな、バニー) 俺がバニーだけを選べたら未来は違っていたのにな。けど、俺は決しておまえだけを選ぶことは出来ない。そうしてしまったら、もうそれはきっと俺ではないんだ。だから、許してくれなんて言えない。 はらはらとバニーの目から涙が零れていく。 前はキレイだと思ったその涙は、今は俺の心臓をぎゅっと締め付けて、ただただ俺を悲しくさせるんだ。 「大丈夫ですよ、虎徹さん。わかってます」 涙をこぼしながらバニーは微笑んだ。それを見た俺はますます悲しくなって、もうどうしたらいいのかわからなくなっていた。 「いいんです。僕だけを選ばなくて、それが虎徹さんなんですから、大丈夫、大丈夫ですよ。ああ、だから泣かないで」 バニーの白い指先が俺の頬をなぞる。そうして初めて俺は泣いていたのだと知った。俺も手を伸ばして、頬を伝う涙をぬぐった。 「さよなら、虎徹さん」 「ああ、さよなら、バニー」 ――俺の呼吸が止まるその瞬間まで、おまえの幸せを祈っているよ。 泪 いきなり別れ話ネタ\(^o^)/すみません イメージとしては本編後相棒以上恋人未満の付き合いをしていたコテバニです。作中で説明し忘れました; 別れ話なんて書きましたが、私は心底バニーちゃんの幸せを願っております!バニーちゃん幸せになってね! 2011/10/25 |