ユーフェミア・リ・ブリタニアがアッシュフォード学園にて特区宣言を行った。ルルーシュにとってそれはまったくの予想外な出来事であった。それにより黒の騎士団は反対派と賛成派に分かれて罅が入りかけている状態で、どちらを選んでもルルーシュが今まで築いてきたものは崩れ去ってしまう。 生徒会室のモニターにはユーフェミアとそのすぐ後ろに控えるスザクの姿が映っている。スザクをナナリーの騎士にすることも叶わず、この上、ルルーシュの存在証明さって奪おうとするユーフェミアの姿をルルーシュはモニター越しに苦い気持ちで見つめていた。 『そこには差別や階級は存在しません。特区では日本人は日本人として生きられるのです!』 『ユーフェミア皇女殿下、今回特区設立に乗り出した理由はなんでしょうか?』 記者の声色には妙な含みがあった。おそらく皇女殿下の恋人と噂される騎士とのゴシップを聞きだしたいのだろう。ルルーシュは心の中で下種めと罵った。 負の感情というものに疎いユーフェミアはにっこりと笑みを浮かべる。 『ルルーシュとまた一緒に暮らすためですわ』 (……は?) 思わぬ言葉にルルーシュは自分の耳を疑った。 「おい、ルルーシュ。ユーフェミア様の言うルルーシュっておまえだったりして? って、そんなわけないよなー!」 リヴァルの能天気な言葉もルルーシュには届かない。ルルーシュはじっとモニターを凝視した。 『あら、わたくし今変なこと言いましたか?』 『ユフィ、今、ルルーシュって言ってたよ』 『まあ! 本音と建前が逆になってしまいましたのね』 『そんなことより、僕のルルーシュと一緒に暮らしたいってどういうことかな?』 『僕の!だなんて図々しい! ルルーシュはわたくしのです!!』 『寝言は寝て言ってくれないかな。ルルーシュは7年前から僕のだよ。(寝ている間に一方的に)キスだってしてるし、たまに泊まったりしてる。僕が軍務で今日はいけないって言うと寂しそうな顔するんだよ!』 『それがなんだって言うですか! ルルーシュはわたくしが濡れていると風邪を引かないように自らのお召し物を脱いでわたくしに掛けて下るし、運動が苦手なのにわたくしのために一生懸命食べ物をとって下さろうとしてくださいましたわ!』 止まらない姫と騎士の口喧嘩。恋人とまで噂されていたのにこの中の悪さは一体なんなんだろうと記者団は沈黙している。そうしてモニターは唐突にお花畑に変わった。 ――只今、電波の状態が悪いためしばしお待ちくださいませ (絶対電波の影響ではないと思う) ルルーシュはフリーズしかけた脳内の片隅でそう思った。 「え! マジでルルーシュなわけ!?」 リヴァルから驚愕の、ニーナからは何故か嫉妬の視線を向けられる。この中で唯一ルルーシュの出自を知るミレイはルルーシュに小声で話しかける。 「ちょっと、どうなってんのよ?」 「俺が聞きたい…」 「お兄様!」 生徒会室にナナリーが入ってきた。だいぶ速いスピードで進んできたようでナナリーの髪が乱れている。 「ナナリー、どうしたんだい?」 「お兄様、逃げましょう!」 「…え?」 「あの人達絶対ここへ来ます! 私のお兄様を渡したり絶対しません!!」 ナナリーは必死になってルルーシュの服の裾を掴んだ。ルルーシュはナナリーを落ち着かせようと肩膝をついてナナリーの手を握ろうとした。 「ルルーシュッ!!」 声と共に生徒会室にスザクとユーフェミアがものすごい勢いで入ってきた。その後ろから2人の様子に気圧されながらも記者たちもぞろぞろと入ってきた。 「ユフィにいくら行っても埒があかないんだ。君から僕のだって言ってやってくれないかな?」 「こっちの台詞です! ルルーシュはわたくしのだって教えてあげてくださいまし!」 あまりの出来事に今度こそ完璧にフリーズしたルルーシュを庇うように、ミレイが間に割って入る。 「ユーフェミア皇女殿下、人違いでは…」 「あ! 貴方はミレイ・アッシュフォード! わたくしを差し置いてルルーシュの婚約者になったあの恨み今もまだ忘れていませんわよ!」 「ちょ、会長! どう意味なんですか!?」 「リヴァルは引っ込んでて!」 「貴方のような年増がルルーシュの婚約者だなんて、この世の終わりです!」 「と、年増ですって?! だいたいユーフェミア様はルルーシュとは兄妹なんですから、婚約出来るわけないでしょう……あ、」 はっと口元を押さえるミレイ。だが時すでに遅し、である。 「まさか、ルルーシュって皇族なわけ…?」 こうして、全国ネットでルルーシュが7年前に亡くなったとされていたルルーシュ・ヴィ・ブリタニアであることが判明し、アヴァロンに乗ってやってきたシュナイゼルに強制送還されたルルーシュは皇族として復帰することになってしまったのであった。 Really became like this why. ブログサイト1万HIT感謝企画にて、莉沙さまよりリクエスト頂きました。ありがとうございました! 2007/11/29 2008/11/19(改訂) |