Day by Day



 黒の騎士団と学生と言う二重生活にただでさえ体力値の低いルルーシュは一時の休息を取っていた。ベースにある私室に勝手に出入りする者はほぼ皆無であり、休息には適していたはずなのだが…ルルーシュがふと目を覚ましたとき、目の前にディートハルトがいた。しかもものすごい至近距離に。
「ほぇあ!?」
「おや、ゼロ、お目覚めになられましたか?」
 何故か異様に鼻息の荒いディートハルトは更に顔を接近させる。彼の額とゼロの仮面はもう接触寸前だった。
「何をしている…?」
「いやですね、報告をと思いましたらゼロがお眠りになっていらっしゃったので、いろいろと貴方のカオスに迫ろうかと…」
 そういうディートハルトの手が明らかに他意を感じさせる手付きでルルーシュの太腿を撫で上げた。ぞわりと背筋を駆け抜ける悪寒にルルーシュは仮面の奥で冷や汗を流す。
「やめろ…!」
「古今東西、抵抗させると男は燃え上がるものなのですよ、ゼロ」
 嫌悪感しか覚えない熱い息が首筋にかかる。ルルーシュは奇跡としか言いようのない素早い身のこなしで、その長い足用いてディートハルトの男の急所を全力で蹴り上げた。
「うぐぉッ!!」
 堪らずディートハルトはソファーから転がり落ちた。ルルーシュはその瞬間を逃すまいと慌ててソファーから降りて距離をとる。
「…報告だけ聞いてやろう」
 あんな目にも遭いながらも律儀な性格のルルーシュはそうディートハルトに言う。床をのた打ち回っていたディートハルトは床に転がったまま視線だけを上に上げる。
「報告の前にお願いがあるのですが…」
「なんだ」
「私の頭を踏みつけ『報告を聞いて欲しかったらこの足をお舐めこの駄犬が』と罵って頂けないでしょ―――ぐほっ!!」
「おまえは一生そこで寝ていろ」
 その言葉を最後まで聞いていたくなくてルルーシュはディートハルトを踏みつけ私室を後にする。ドアが閉まる寸前に「ああ、いい! あなたは素晴らしきカオスの権化だ!」なんて言葉が耳に飛び込んできたが、ここは全力で聞かなかったことするルルーシュだった。
 休息のつもりが休む前より体力を消耗してしまったルルーシュはとにかく何処かで休みたい一心でひたすらに歩いていた。辿り着いたのはKNFの格納庫だった。
 ここなら死角も多いし、なんだったらガウェインのコックピットで休もうとそう考えていると、月下の整備をしていたであろう藤堂とばったり出くわしてしまった。
「おい、ゼロ」
「どうした、トラブ…ほぁ?!」
 話しかけられたそう認識した次の瞬間、腕を掴まれ後ろから抱き寄せられた。線の細いルルーシュと元軍人の藤堂では体つきがまったく異なり、ルルーシュの身体を藤堂の広い胸にすっぽりと包まれてしまう。
「うむ…」
「な、なんだ」
「やはり細くなったな」
「……は?」
 藤堂は確かめるようにルルーシュを抱き締めていた腕で身体のラインをなぞる。本当にただ細くなったことを確認しようとするその手付きに他意はない。他意はないのだが、その慎重な手付きはじれったい快感を呼び起こす。
(天然か!? 師弟揃って天然なのか?!)
 ルルーシュの脳裏に空気が読めないと常日頃評価される幼馴染の姿が過ぎる。
「…ッ、藤堂…!」
「ああ、すまん」
 切羽詰った声にようやく藤堂はルルーシュを解放した。ルルーシュのドクドクと心臓がものすごい速度で動いていて、煩いぐらいだった。
「ゼロ」
 またも名を呼ばれてルルーシュは思わず身体を硬直させたが、今度は藤堂に抱き締められることはなかった。変わりに藤堂の真剣な眼差しが向けられている。
「君がこの黒の騎士団の要だ。君がいなくては出来ぬこともあるだろう、だが君でなくても出来るものもあるだろう。たまには私達を頼れ」
 藤堂の労わりの気持ちがしっかりと含まれたその言葉にルルーシュは驚きを隠せない。まさかゼロにそんな言葉を向けられる日が来るとは思いもしなかった。
「………、感謝する」
 あたたかい気遣いに蓄積していた疲労が少し解消されたように感じたルルーシュだったが、その余韻を引き裂くようにソプラノの声が響く。
「ゼーローさーまーっ!!」
 唐突に現れた神楽耶に横から体当たりするように抱きつかれ、疲れきっていたルルーシュはそのまま押し倒されてしまう。
「アンタ! ゼロになんて羨ましいことを!!」
 後から来たカレンは本音だだ漏れな叫び声を上げる。ルルーシュの上に押し乗ったまま神楽耶は勝ち誇った表情をカレンに向ける。
「悔しかったら貴方もしてみなさいな」
「あ、あたしはそんな…!」
「だったら黙っててください。さあ、ゼロさま! 未来の妻・神楽耶が参りました!」
 手には謎の書類を持っている。あの書類はもしかしなくても、アレだろうか。ルルーシュは突っ込む気力もすでに枯れ果てていた。
「感激のあまりの無言ですのね! ゼロさまったら意外にうぶで素敵★」
 もはや暴走する神楽耶に何も言えず。体力が底を付いていたルルーシュはほとんど気絶するように意識を手放した。



(こんなんでブリタニアをぶっ壊せるんだろうか…俺はどこで間違ったんだろう、ナナリー)




Day by Day





ブログサイト1万HIT感謝企画にて、咲夜さまよりリクエスト頂きました。ありがとうございました!




2007/11/19
2008/11/19(改訂)